モヤイ像前でふと夜空を見上げると、北風にあおられたプラタナスの落ち葉がゆっくりと宙を舞い、それは加地さんのふんわりクロスのようだ。待ち合わせの時刻にはまだ少し早い。事の発端は、数日前の記事に寄せられた一通のコメントだった。
このカジオログを書籍で紹介したからそれを私に一冊送りたい、コメントにはそうあった。嘘、すげー、やった、と一瞬喜んだものの、猜疑心の強い私は、本当なのか?何かの罠なのではないか?例えばコメントの主は実は加地さんの代理人で、私は名誉毀損か何かで訴えられ、書籍ではなく裁判所から呼び出し状が届くのではないか?とか、「勝ちT」のニセサイトを作った罪で逮捕されるのではないか?などと怯え、恐る恐るメールを送ってみたところ、返事が来てこうあった。
「軽く一杯やりませんか」
やばい。これは訴訟とか逮捕なんて生やさしいものじゃない。消される。お前は加地さんについて書きすぎた、とか言われ、消されるのに違いない。小心者の私は震える手で返事を打った。
「ぜひ行きましょう」
小心者は誘いを断れないのだ。家の者宛に書き置きをした。「加地さんのミドルシュートを見に行ってきます」。それが、星になる、という意味として伝わったかどうかはわからないが。
そうして私はモヤイ像の前にいる。ああ、最後にもう一度ふんわりクロスが見たかったな…と思っていると、後ろから肩を叩かれた。
「あのぉ〜、決して怪しい者ではないのですが、ここにサインさせていただいても、よろしいでしょうか?」
振り返るとそこには、加地さんがいた。嘘だけど。あ、いや、全部嘘じゃなくて、まあほとんど嘘だけど、とにかくその本のライターのひとりである高井ジロルさんに会い、本を頂いたのである。本当に、そして思った以上に詳細に掲載されていて驚いた。
その本とは、「このブログがすごい! 2006」だ。しかしどうなんだろう、載せて頂く本を間違えたのではないか。「このブログだかなんだかよくわからないものがすごくない! 2006」に載るべきだったのではないか。
いやでも本当に嬉しく、この場を借りてお礼を言わせて頂きます。12月16日発売。買おう。