お互いの両親に挨拶し、指輪を買い、式場を決め、新居を見つけて、それくらいあとになってから徹は白状したのだけれど、あの時「うん、まあ、一応、プロポーズだけど」と答えたものの、実は全くそんなつもりではなく、ただ純粋に浮かんだ疑問を口にしただけだったのだそうだ。「あの試合観てて、思ったんだよ。早絵は俺の苗字で呼ばれるの、やっぱ嫌だろうなあって」。
そんな疑問が湧くということは、徹は私がいずれ同じ苗字になることを当然のことと考えていたという証拠だし、それに結果的に私たちはこうして結婚できたわけだからまあいいのだけれど、でもよく考えたら、つまり私はまだちゃんとプロポーズされていないということではないか?プロポーズされていないのにOKの返事をし、プロポーズされていないのに結婚して、プロポーズされていないのに…ん?あ、私が呼ばれてる。
「加地さーん、加地早絵さーん、診察室へどうぞ」
はーい。まだ慣れないその名前に返事をする。加地さんと呼ばれるのは全然嫌なんかではなく、むしろそう呼ばれて返事をするときに心の中に一瞬現れる、照れの交じった小さな違和感のようなものに、今はささやかだけれど確かな幸せを感じるのだ。プロポーズされたかどうかなんて全く問題じゃないほどの。
立ち上がって診察室へと向かう。目立ち始めたお腹をそっとおさえながら。
タイトルの「8702」ってそういうことだったんですね。なるほど、深いです。ところで、女性の名前の読み方は「さえ」ですか?それと、「あの試合観てて、思ったんだよ。早絵は俺の苗字で呼ばれるの、やっぱ嫌だろうなあって」。この試合、もしかして加地大惨事?
男の子だったら名前はやっぱり「あきら」ですかね?
ぜひ「加地」さん達に幸せになってもらいたいですね。そのうち「8703」になりますね。
>>加地マニアさん
加地さんの大惨事が原因なのか?それとも「かじさえ」という名前になるのが嫌だろうと思ったのか?本当のところは徹にしか分かりません。
>>もんもんさん
当然でしょう。そして小さい頃からサッカーをやらせ、将来は日本代表二人目の「加地あきら」に。
>>クリアファイルさん
大丈夫、きっと幸せな家庭を築いてくれます。だってなにしろ、「加地さん」ですもの。