直前になって、フクアリでナビスコカップジェフ対ガンバの試合があることに気がつき、そうだよ、アンテナがないなら観に行けばいいんだよスタジアムへ、ということで私は電車に飛び乗ったのだった。
直後からなんとなく嫌な予感はあり、電車が千葉県内に差し掛かったころ、これはもしかするとまずいのではないか、と私は思い始めた。この感じだと、間に合わない気がする。やばい、頼む、急いでくれ電車。変な汗を流しながら祈るけれど、もちろん電車は通常通りの速度でしか進まず、やっと蘇我駅にたどり着くと私はダッシュで改札を抜けた。と思ったらSUICAの残額不足で抜けれなかった。
清算機の行列に並び、清算を済ませ、今度こそ改札を抜け、急いでフクアリへ向かうものの途中の信号にことごとく引っかかり、やばいよもう本当に間に合わないとなお焦り、やっとスタジアムにたどり着けば今度は手荷物検査、さらに私のチケットで入場できる入り口はもっと先で、雨の中傘も差さずに走り、ようやくゲートをくぐったけれど、もし満員で入れなかったらどうしようという心配がよぎり、とにかくダッシュで飛び込んだら、よかった、なんとか間に合った。
うんこを漏らさずにすんだ。
よかった、トイレの個室は満員ではなかった。危なかった、電車の中でお腹が痛くなり始めたときは、もうだめかと思った。いい歳をしてうんこを漏らすことを覚悟したほどだ。出かける前に急いで食べたのがよくなかったな。
ようやく心身ともに落ち着いて、スタンドの座席に着くと、ほどなく両チームの練習が始まった。しかしどうもおかしい。カメラの望遠レンズを駆使してひとりひとりチェックするが、やはり、いない。羽生が、いない。そんなばかな。羽生が出ないなら、何のために私は雨の中フクアリまでやってきたというのだ。
うんこをするため。
そうか、そうだよな、家ですると水道代がかかるし。納得した私はそのまま席を立ち、先ほど走ってきた道を、肩を落としてとぼとぼと帰ったのだった。
急用で星に帰ったのかい?蘇我の夜空を見上げてみたけれど、雨雲に覆われたそこにはひとつの星も見えず、寒さにちぢこまった私のアンテナは羽生からの返信を受信できない。雨粒が私の顔を濡らした。